先日、思い切って月刊「Furlong」に「熱砂の戦慄」を連載されている、大阪日刊スポーツの池永博省氏に質問のメールを送信したところ、不躾な願いにも関わらず、快く答えてくださり、公式には「不明」とされてきた、第1回から第4回までの勝ち馬が漸く判明しただけでなく、様々な事実を知ることになったわけである(池永氏には多謝!)。
その話によれば、「タガミホマレが兵庫大賞典を制した頃から園田・姫路競馬を担当している」という池永氏が、担当となった当初、兵庫県競馬の記録やデータは、全く存在していなかったとのこと(汗)。
そこで楠賞が全国交流「全日本アラブ優駿」となった時に、主催者、実況の吉田勝彦氏、さらに専門紙の資料を元に、記録やデータを整理すると共に、改めて重賞競走を整備。
それまで行われていた競走については、遡って回次がつけられ、1962(昭和37年)5月3日に施行された「銀盃賞」を第1回として認定したとのこと。
ところが、認定後数年して、1961(昭和36)年5月3日にも同条件で「銀盃賞」が施行していたことが判明――つまり、正確には楠賞は、今年で43回目、ということになるらしい……。
なお、第0回(?)の勝ち馬・フクマサは、その後、ミヤマシユーホーと改名し、種牡馬となり、その血は多くの名馬に受け継がれている。
全国交流になって以後は、数々の激闘を繰り広げられてきたわけだが、どうやら、この辺りでその歴史に終止符が打たれることになりそうだ。
ならばせめて、「楠賞」の名だけでも残せないものかな、と考えている今日この頃。
とにかく、ここ数年来、楠賞の第1回から第4回の勝ち馬については、個人的な懸案事項となっていて、色々と各方面に当たって調べてきたわけだが、「間に合って良かった……」というのが、今の正直な感想である。
全兄に先日、タマツバキ記念を制した「六甲山爆撃機」サンバコール。兄に比べるとジリ脚傾向にあるが、「気が付けば先頭に立っている」という走りで、現時点での兵庫県アラブ3歳のNo.1。それどころか、サラブレッドの中に入れても、相当な強さを発揮するものと目されている。
サンクリント、クールフォーチュンの前に霞みがちだが、この馬もなかなかの実力の持ち主。ファーストクロップから、アラブサイアーランキングを席巻しつつあるニホンカイユーノス産駒にしては、ややインパクトに欠けるが、3着に終わった父の無念を晴らしたい。
余談だが、調教師の姓は、「つり」と読み、兵庫県の播磨地方では、案外とメジャーな苗字らしい。
全兄に「冷凍超獣」イセイチフブキ、「剃刀ファイター」クールテツオーがいる良血馬。
全日本2歳アラブ優駿を制したものの、その後は休養し、4月に復帰。
緒戦、2戦目と敗れたものの、3戦目で勝利し、回復基調になりつつある。が、兄同様、距離にやや不安があり、現状ではサンクリントとの戦いとなると、少々分が悪いか?
但し、地元のサラ3歳と遜色の無い力は持っているので、自分のペースで競馬が出来れば、あるいは逆転の目もありそう。
元々堅実駆けはするタイプのようだが、ここではツラいものがあるのは事実。
そういや、ばんえいにシルバーブリットってのが、居たなあ……。
それはともかくとして、この「銀の弾丸」を意味する馬名は、金沢競馬が主催したファン公募によって、付けられたもの。そんなファンの願いを背に、見事、楠賞というターゲットを撃ち抜くことが出来るか?!
福山のクラシック戦線を形成している1頭で、今まで掲示板を外したことのない堅実さを持っているが、ややインパクトに欠ける。ただし、今や兵庫県をもしのぐ「アラブのメッカ」と化した福山の馬だけに注意しておきたい。
福山ダービー2着馬。出走してくれば有力候補の呼び声も高かったユノエージェントが、「名より実を取って(賞金同じだし……)」?瀬戸内賞に回ったことで、こちらが楠賞に参戦することとなった……って、この馬も瀬戸内賞出てるやん!(7着敗退)
やや、スイグンと比べても、力不足の感は否めないか?いくらアラブとはいえ、この中11日のローテーションは少々キツいような気がする。
しかし、年々層が厚くなっている福山の馬だけにマークはしておきたいところ。と思ったら、案の定回避の模様。
ホッカイドウでデビュー。全日本2歳アラブ優駿8着の後、兵庫へ移籍。
なかなか勝ち切れないレースが続いていることもあって、強くは推せないが、かなりの地力はあるはず。
しかし、リアルシャダイの肌にフォーモサボーイとは、確かにビミョウな(笑)血統の馬である。
ここのところ、ヤマノユーノスに煮え湯を呑まされ続けている東海地区のアラブ3歳No.2。
全国の大舞台で、ライバルを逆転することが出来るか?!
そして、騎乗予定の宇都騎手は、先日のタマツバキ記念の雪辱を果たすことが出来るのか?!
その意味では、注目の馬である。
未だ2勝のみだが、園田2歳優駿で3着、園田・福山交流特別で2着と重賞戦線でも実績を持つ。
ここのところ2着と3着が多く、勝ち星から見放されているのが気がかりだが、不気味といえば不気味なムードを漂わせている。
牝馬ながら、長距離遠征となった全日本2歳アラブ優駿で2着と健闘し、一躍、全国区になっただけでなく、一部アニメ&ゲームファンのやや熱すぎる視線も集めることとなっている。
年明け以降、未勝利だが、これは上山が新年度よりレギュレーションを変更し、サラ系に編入された為。
サラ3歳の上位クラスの中で健気に奮闘する姿に、ファンが急増している模様。
「日本一小さな競馬場が生んだスーパーヒーロー」ニホンカイユーノスの初年度産駒。一見、単調な逃げ馬だが、ここまでで連を外したのは、全日本2歳アラブ優駿(5着)の1回のみ。並ばれてからの粘り強さには特筆すべきものがあり、アラブカップ、アラブダービーと、ブラウンブルドンをタイム差無しながら、振り切っている。恐らく、笠松では最後の世代のアラブとなるので、全日本アラブQC以外は、意外にアラブの全国タイトルに縁が無い笠松にタイトルを持ち帰りたいところだろう。
「なんと金沢の馬が、ミスターサックスを交わす気か?!交わす気かっ?!」
あの、吉田アナの殆ど悲鳴に近い実況から1年――。
全国交流となって以後、兵庫県勢14勝に対して他地区からの遠征馬は16勝。
’99年にサラブレッド導入に伴いコースが改修されてからは、前年まで地元勢が5連勝中だったこともあって「ますます地元に有利になるのでは?」という声もあったが、意外にも改修以降の4回は遠征馬が3勝。それもうち2回は栃木(宇都宮)、金沢と楠賞とは縁の無かった地区の馬が勝利している。また、1番人気の馬がなかなか勝てないのも、改修後の傾向で、ワシュウジョージ、タカライデン、クールテツオー、ミスターサックスと、錚々たるメンバーが並ぶが、いずれも圧倒的な1番人気に推されながら敗れ去っている。
また、地元同士、他地区同士で決まることが少ないことと、逃げ切り(思い浮かぶのは、荒尾の2頭……)や豪快な追い込みで勝つケースも少ないこととも、傾向として挙げられよう。
さて、肝心の今年の展望だが、福山のユノエージェントが、あっさりと瀬戸内賞一本に絞ってしまったこともあって、やはりサンクリントを軸にした相手探しになるだろう。
ただ、それだけマークがキツくなるのも事実で、兄のサンバコールに比べて、ややズブいらしいサンクリントにとっては、道中でいかに良いポジションを取れるかがカギ。
対抗格として地元勢では、やはり実績上位のニホンカイブルーが挙げられる。その一方で、東海から参戦の2頭が、何とも不気味なムードを醸し出している。
また、どの馬も2400mは初距離ということもあって、まさに女神の気まぐれか?!悪魔の仕業か?!といった結末になる可能性も高いのも事実だ。
とにかく、6月19日、今日を生き抜く為、わずかな明日を求めて、運命のゲートは開く――。