コミックマーケット58(夏) 雑記録
2000年8月11日(金)、12日(土)、13日(日) 於・東京ビッグサイト(江東区有明)

前夜――8月10日(木)

 いよいよ明日から、日本の夏の風物詩「夏コミ」が始まるということで、気合いを入れる為、行きつけの整骨院で身体をほぐしてもらう。
 実は、今回も私はカタログを買っていない。つまりそれだけ金が無いということである。
 それでも3日間をバテずに乗り切る為に、バナナとミネラルウォーターをしっかり買い込んでおいた。


初日――8月11日(金)

 今日は、RINKO女史のところで本をもらうのと、越智健氏のところの様子を見に行くくらいしか用事がないので、午前中は「熊の穴」で練習を見学、それから有明に向かうことにする。
 「熊の穴」では、翌日の試合を控えて最終調整をしていたのだが、やはり早い段階でJ1残留を決定的にした影響からか、ここのところ全体的にモチベーションが下がっているようだ。それだけではなく、負傷者や調子を落としている選手が多いのも不安な材料。みんな肉体的にもパンとしてないし、だいたい勝てそうな雰囲気がほぼ皆無だった。
 ――このままだと、サッカーの追っかけ日記になってしまうので、話を戻す。
 さすがに昼を過ぎると、初日ということもあり、ラクに入場できたのは云うまでもない。
 まずは越智健さんのところに向かう。個人誌の方は、印刷が間に合わなかったらしいが、私も原稿を書いている合同誌の方は、なんとか完成していて、そこそこ売れていた。
 それにしても、一段と「イサミ」から離れていっているような出来になっているような……それはまあ、放っておいて……
 取り敢えず、越智さんのスペースをベースキャンプにして、ブラブラとする。
 んでもって、RINKO女史のとこで、約束のブツをいただく(なお、女史本人は、仕事の為居られなかった為、ブツは代理の方にいただいた)。
 初日終了後、イサぴー4人で少しお茶でもと思ったのだが、考えることはみな同じ。どこも混みまくっていた。
 つーわけで、少し離れた場所にある江東区立有明スポーツセンターの展望レストランに行く。私の哲学としては、自分の行ったことの無い店には、基本的には誘わない主義だが、今回は仕方がない。しかし、この選択は間違いではなかったようだ。
 窓際の席から眺める風景が、抜群に良い。そのせいか、料理もなかなかのレベルのように感じられた。客単価は一人当たり2000円くらいと考えておけば良い(但し、今回は一人1000円かかってないはず――店の人間は泣きが入ったかも知れない――苦笑)。ま、この辺りでは標準的な値段である。
 あの風景、特に夕方から日没、さらに夜のそれをバックにすれば、女でも男でも口説けそうだ(笑)。或いは商談にも良いかも知れない(私には、そのような機会は終生なさそうだが……)。
 そこで軽食を摂った後、みんなと別れ、私はスポーツセンターのプールで泳ぐ。
 夕焼けをバックに泳いでいたのだが、日没近くになって、開いていた屋根が閉じた。その光景は、自分がまるで映画の一シーンに紛れ込んでしまったかのような気がして、なかなか感動的であった。
 それにしても、私は泳ぎがヘタらしい。ある一定速度をキープしていないと、身体は沈むわまっすぐ進まないわ、というわけで50m泳ぐのが精一杯。私、なんだかんだで昔から持久力には全く自信の無いのだが、それでも高校時代は100mくらいなら、割と簡単に泳いでいたのに……トシはとりたくないものだ。
 夜、最近入院していたFC東京のフロントX氏から、メールが届く。
 先月の18日には退院していたそうだが、実は直腸ガンで初期とはいえ、結構シャレになっていなかったらしい……。
 取り敢えず、来週中にでもご機嫌伺いに行くことにする。
 

中日――8月12日(土)

 実を云うと、前夜は全身(特に上腕部)の筋肉が騒ぎだし(痛かったわけではない)、全く眠れやしなかった。
 中日は、不見乃氏のペンチャックシラットの本の売り子をしつつ、スポーツ関連のブツを漁る。
 いやあ、西館はのどかだったなー……。スポーツ系のサークルは今回、売り上げで割と苦戦しているところが多かったように思える。原因としては、本来、スポーツ系の本を買う人は、必ずしもそれ目的ではなく、ついでや勢いで買っていく傾向にあるようだ。ということで主催者には、配置について再考を願いたい次第である。
 今日は、お客の中に私の知人で酒乱のZ氏(柔道四段)がいた。
 聞けば、最近ますます、酔って記憶が飛ぶまでに時間(と酒量)がかからなくなったとのこと。
 ……それはまずいでしょうよ……。
 で、結局、購入したのは、次回の申込書と「ダートマニア」なるコピー誌&「横河電機中毒完全マニュアル」という妙な(?)サッカー本。
 そして終了後は、何を思ったか、夢の島競技場でJFLの「横河電機vsアローズ北陸」を見物。と、そこで何故か瑞穂に行っているハズの「不純パの会」黒幕(と私が勝手に指名した)であるT氏と会い、二人並んで観戦。
 それにしても今季の横河電機は前後期通じて、絶不調、栃木SCと無様なまでの最下位争いを繰り広げている。この日も今年昇格したばかりのアローズに開始早々の2分に先制を許してしまう。その後は互いに攻め合うも詰めの一歩前の段階が甘く、シュートにすらつながらない場面が多かった。この辺りがJリーグとの差か?とにかく、前半はアローズのリードで折り返す。後半になり、またしても早々にアローズがPKを獲得。メインスタンドから見る分には、ノーファウルに見えたが……あの場面については、主審の立ち位置もあるし、何よりもその一つ前のDFのミスと、慌ててGK山岸が飛び出した時点で、結末が見えていた。これをきっちりと決めて2−0。以降、タルい時間帯が続くが、後半も25分を過ぎたあたりから、高い意識で守っていたアローズも疲労が出てきて、徐々に横河のペースになった。やはりフィジカル面で劣るアローズは、次から次へと選手が負傷あるいは、動きが極端に悪くなっていた。85分に横河がカウンターから漸く1点を返したものの反撃もここまで。それにしても、JFLの中でも、かなりの戦力を持っているハズの横河が、どうやったらあんな弱くなってしまうのか?この辺りは、川崎フロンターレと相通じる部分がある。横河電機のファンクラブに入ると、「もれなく夢と希望がついてくる」らしいが、この日のゲームを見る限り、夢も希望もあったもんじゃなかった。
 なお、この日の夢の島競技場は、東京湾大華火祭のため、20:30までスタンドが解放されていたが、台風が近づいていて、雨も降り出しそうだったので、私自身はさっさと帰宅。翌日に備えることにする。
 そういえば、この日の夢の島、妙なオーラと大荷物を抱えた客が多かったような気がしたのは、私だけか?
 その後、瑞穂でゲームをしていたらしいFC東京は、先制したものの、ついにピクシーの逆鱗に触れ、結局1−4とボコボコにされる。本来の実力差を考えてみれば、こんなもんでしょ?!
 それと中山に出ていたタマルファイターも今回は馬券に絡めなかった。個人的には、中央、それが無理なら笠松か名古屋あたりに移籍した方が、馬の為のような気がするのだが。この馬、地元・高崎のような深いダートは、基本的ダメなんだろうし……。
 あ、「ハートフルシーン」を聴きそびれている……。
 ついでに「ナシゴレン」って、タイ風のチャーハンのことだったのね……。

千秋楽――8月13日(日)

 いよいよ20世紀最後の夏コミも最終日。メインエベントである。昨日の夜から降り出した雨は、ますます雨足が強まり、その為に雨装備に手間取り、私が現場に着いたのは、9時ギリギリくらいだった。しかし、頼みのポンチョが、あまり役に立たず、私の着ていた洋服は、見事に前後でツートンカラーになっていた。
 ちなみに今日は、山崎円花(弟)氏のところで売り子。一応、ポジションとしては、「どれみ」本の地区であるが、我々のスペースは少々異彩を放っていたようだ。店頭に並んだのは、山崎氏の新刊ミニコピー本と、初日に売った本の残りと、初日には間に合わなかった「ニセのガンバマンクラブ」、そして私の手元にあった昨年夏の本の4種。
 そんな場所にもありがたいことにちょこちょこと来客があった。
 そして、山崎氏と越智氏の新刊は、めでたく完売。さらに4冊ほど残っていた昨年夏の本も、なんとかさばけた。
 ちなみにこの日の私はFのホーム用のレプリカ、山崎氏はCLMのホーム用レプリカを上に羽織っていたのだが、ある人に「他に同じ様なツーショットをしているサークルがありますが、パクったんですか?」と訊かれ動揺。世間で云う変わり者の集まりであるコミケにおいて、こんな格好してんのはウチらだけ、と思っていたが、探せば同じ事を考えている人間は、いくらでも居るものである。
 その合間をぬって、いるか座女史のところや樫居女史のところに行く。
 そういえば、私は樫居氏のところで、大変な失礼をしてしまった。どうやら私は、樫居女史と女史の連れの方とを誤認していたようだ。つまり連れの方のインパクトが強烈だったもので……(敢えて云うならば、宮嶋千佳子に似ている)。フォローしようとして、さらに失敗を重ねる最悪の展開。これには普段、傍若無人無礼千万で通っている私も、「俺って、サイテーだ……」と、さすがに自己嫌悪に陥ったのは云うまでもない。
 昼飯は当初の予告通り、TFTビルの「カフェバルコニー」の1050円ランチを食いに行った。
 今日のメニューは、ミートローフデミグラスソース、サラダ添えがメイン。これにパンorライス、プリンとコーヒーor紅茶(ホットとアイスが選べる)が付く(さらに+300円でケーキも付けられる)。ついでに云えば、この店はホテル日航東京の直営である。この値段でホテル並みの料理が食べられると思えば、安いものある。いわゆる洋食屋に行くと、ヘタすると、ここより高いくらいだもんな……。
 メインのミートローフは、ただ柔らかいだけの料理が幅を利かせて居る中、適度な歯ごたえがあり好感が持てた。私の舌と眼が確かならば、どうやらつなぎにジャガイモ(メークイン)が入っていたようだ。デミグラスソースも恐らくかなり手が込んだものを使っていたはずだ。缶詰のそれとは全く違う。これがミートローフと実に良くマッチしていた。これだけでも経営担当者が、「ファミレス並みの値段でホテルレベルの味のランチ(とサービス)を」とのモチベーションの下、相当に力を入れていることと、調理担当者が相当な手練れであることが分かる。そして私は、これまたホテルの自家製らしいパンで、ソースをこれでもかとすくい上げていた。パン自体は、やや淡泊な印象があるが、これを見越してのことなのだろう。デザートのプリンも一ひねりある仕上げになっていた。
 それにしてもコミケに行くと、恐ろしいことはあるもので、同じ地区に津田沼人脈を発見。おかげで津田沼系の人々と久しぶりの対面を果たすこととなる。パンピン氏はともかくとして(笑――なんて失礼を……)。さらに私の過去を知る数少ない人間にも2人ばかり出会ってしまい、めちゃめちゃに驚く。しかもその2人、昔と格好が変わってないし……。マイナー文化系の人間は、何年経っても変わらないですねえ〜。え、私が云うなって?!
 16時の時報と共に、我々の20世紀最後の夏は終わった。
 会場に居る殆どの人間が拍手をする中、我々の周辺だけは、衆議院解散の際の慣習にならい、「スペースが取れるように」との願いを込めてバンザイ三唱をしていた。
 みんなと別れると、私は殆ど寄り道をすることも無く、家に真っ直ぐと帰っていった。
 今回は、なんとなく淡々と3日間が過ぎていったような気がする。本当にあれ?と思っている間に終わってしまった。
 参加して随分と長くなるが、会場に行く目的が、「同人誌を漁る」ことから「盆と暮れのご挨拶」に、段々と自分の中で変化しつつある。
 それでも家に帰ると三日分の疲れが出てきたようだ。「DVSのおへや」と「おみのお時間」は聴いたが、「まにまに」や「ポエム」、「シネスト」まで聴く気力はもはや無かった。

 

祭りの後――8月14日(月)

 どうやら前夜は、21時には力尽きてしまったようだ。ハイテンションを3日以上保っていたせいか、疲れが出て、頭が少し痛い……。
 次回は、2年ぶりの年末2日間開催。しかし、これにより、東京大賞典とのバッティングが確定してしまい、今からスケジュールの調整に頭を痛めている。
 それはともかくとして、今回、手に入れた本を整理してみる。
 今回は経済的事情もあったので、いつもより数が少ないうえに、「勢いで買ってしまう」本は全くと云っていいほど無い。

購入(+もらいもん)一覧&感想。
初日
「蘭麝」――RINKO女史からのもらいもの。一応、「FX」本。

 この人が書く小説って、独特の躍動感があるんですよ。特に街に関する描写は、生半可な知性、教養じゃ書けないな、と思いますね。うーん、嫉妬してしまいそうな、自分がイヤだ……。

「飛べ!イサミRADICAL・Millennium」――私も2頁ばかり参加している「イサミ」コピー誌。

 参加している自分が云うのもナンですが、ますますアニメ同人誌というものから、かけ離れていっているような気が……。却って予備知識が無い方が、読みやすそうだというのも、我ながら凄い話だ……。

中日
「Dirt Mania」――地方競馬のコピー誌。名古屋競馬場とシアター恵那(笠松場外)の特集。
「嗚呼、我が素晴らしきシラット人生」――不見乃氏からのバイト代代わり。コピー誌。

 本の内容はともかくとして、ここだけの話、不見乃氏は、我が国では数少ない本物のペンチャックシラット使いです。

「横河電機完全中毒マニュアル」――98年新JFL昇格を記念してつくられた本。

 それにしても、あれだけ実弾が揃っていて、環境その他にも比較的恵まれていて、どうして勝てない横河電機?!


千秋楽
「ニセのガンバマンクラブ創刊号」――初日には間に合わなかった、越智健氏のコピー誌。
「どこでもいっしょ」――武鳥抄氏の「イサミ」コピー誌。こちらは、我々と違い、正統派の「イサミ」同人誌。
「Pretty witch girls」――山崎円花(弟)氏が、今回送り出したコピー誌。「おじゃ魔女どれみ#」本ということで……。
「RIDDLE STORY 2000.5.3」――いるか座氏の「FX」本。
「RIDDLE STORY 2000.8.11」――いるか座氏の「FX」本、その2。
「FACELESS BEAUTY」――樫居晶氏のオリジナル作品シリーズの2作目。

 「DIGITAL WIZARD USER’S CASE」シリーズの第2話。創作ってジャンルには、どうしてもSF系かファンタジー系が多いのですが、これもご多分に漏れず、SFな作品。ただ、この話自体は、少女漫画テイストで、SFは苦手だという向きにもとっつき易いかも知れないです。

「FATAL PARADOX−電影群像・前段−」――この夏の新刊。上記のオリジナル作品シリーズの3作目。

 上記の続編ですが、やや暗めな仕上がり(?)になっているようです。私、創造力のある人って、無条件に尊敬してしまいます。この人の描く話って、痛みが伝わるんですよ。一つ一つの表現が、脳に響くというか……。「前段」と銘打っているように、話は「後段」に続きます。さあ、この話、冬にどう決着をつけるのか!?そうやって作者にプレッシャーをかける私も結構「鬼」だと思う。


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