2000年4月、MXテレビは、
(ただの)
つまらないテレビ局になった。


 それにしても、2000年4月期における東京メトロポリタンテレビジョン(以下、MX)の改編には、絶望させられた。
 ムカつくのは、個人の勝手といってしまえば、それまでなのだが、それでなくても今回のMXの改編は不可解な部分(といっても業界では「当たり前」のことなのだろうが……)が多い。



 まずは「Rainbow Cafe」である。
 レインボーカフェは、おそらくMXで最もゼニ(つまり視聴率)が取れていた番組のひとつであったハズだ。元々月曜から金曜放送で、木曜日は「タカラヅカ特集」と銘打って、放送していたものを4月から「タカラヅカ特集」=木曜のみになってしまった。
 あの番組の面白さは、「何が飛び出すか分からない」ことにあったのでは無かろうか?
 なんたって呼ばれたゲストが、タレント、そば店の3代目、某皇族(本当に実話――そのあまりの言動&内容の為、宮内庁では「無かったもの」として処理をしている、とのウワサ)、悪役レスラー、漫才師、カウンセラーとまあ、脈略のないこと甚だしかった。わけのわからん世界を構築していた。それをみんなが期待し、愉しんでいたはずである。
 TCK中継について云えば、4月改編でてっきりトゥインクル3時間放送(やるとしたら当然、18時30分から21時30分)になるのでは、と秘かに期待していたのを、見事なまでに裏切る結果になってしまった。CMを入れるのは悪いとは云わないが(実際、MXにとって多大な収益を産むはずであるだろうから)、自社CMや災害共済の連発はいい加減カンベンしてほしい。恐らく開局当時からの番組としては、ほぼ唯一の生き残りであり、MXのアイデンティティを支えてきた番組であったはずだ。その割には東京NEWSでニュースとして取り上げられたのは、私の知る限りでは、「スーパーオトメ、首都高を大逃げ」、「アブクマポーロ、東京大賞典制覇!」と「佐々木竹見騎手、6999勝目を挙げるも、落馬負傷」、「ハクホウクン初勝利」の4つだけだったような気がする。ま、あとはレポートというか特集であの「佐々木の予想」(日本一有名な公認予想業者)が取り上げられたこともありましたが……。ここだけの話だが、「何故、もっとTCKのことを東京NEWSで取り上げてくれない?」とTCK中継関係者がボヤいていたのを私は知っている。
 それにしてもMXの最大のウリであるハズの番組の「制作・著作」権をあっさりと放棄してしまった点は、不可解極まりない。
 


 さらに云えば、やたらと払い下げの教養系番組が増えたのも気になる。
 単純に予算の問題で、コスト削減を図ってのことなのだろうか?
 それなら「殆どゴーモンに近い」と云われるビデオクリップ&文字ニュースでも十分ではないか、と思うのだが。
 元々チープさをウリにしていたテレビ局とはいえ、これ以上、チープにしてどーしよーというのだろう。ものには限度があるだろうに。
 レインボーカフェにしても、一番視聴率が良かった(=ゼニが取れる)、「タカラヅカ特集」に特化したということも云えるのだろうが、それがレインボーカフェの持ち味をも消し去ってしまっているような気がするのだ。
 TCK中継にしても、他の公営競技中継には無い、常軌を逸した情熱というか独特の世界観というものをウリにしてきたはずだし、それを視聴者は支持してきたのだ。故に「MX?!うむ、あそこは競馬しかないぞ、不許可であ〜る!」という云われ方もしてきたのだが……。
 諸悪の根元は、テリー伊藤が、MXの番組制作に参入したことにあると、私は勝手に推測している。
 「Tokyo Boy」なる番組が始まってから、MXはおかしくなったように思えるのは、私だけだろうか?
 元々現・都知事が彼に「あのどーしよーもないTV局、なんとかしてよ」と、依頼したのが始まりのようだが、彼の持ち味はメジャーなTV局でこそ発揮されるものであり、MXの土壌には全くと云って良いほど適さないことは、最初から明白であった。
 つまりのところ、テリー伊藤が、MXに影響を与えるようになったからというもの、妙なメジャー指向に走り出し、本来の良さを無くしてしまったのだ。
 MXとは、本来、誰も見ていないのを逆手にとって、チープでバカバカしく、かつ情念溢れる番組を流すことで、存在理由としてきたはずである。
 そして、その魅力とは、たとえ「化粧が厚い」(失礼!)と云われても白沢みきのスピーキングマシンぶりであり、「殆ど拷問」と揶揄されてもビデオクリップと字幕ニュースをこれでもか!と流し続けることであり、生真面目なんだけど、どーしても胡散臭さを全身から発散させてしまう鈴木哲夫の存在なのだ。
 それが、「お向かい」を始めとするキー局と同じようなところを目指して、一体どーしようというのだ!?
 徹底したマイナー指向というか、反世間的なギラギラとした殺気こそが、MXの魅力ではないのか?!
 あぁ、それを忘れたMXは、もはやMXではないのである!
 後発のU系独立局として、やらねばならなかったのは、一般世間に媚びることではなく、本来持っている魅力・凄みで勝負し、その思想を広げることであったはずなのだ。
 だから私は云う、MXはただのつまらんテレビ局になった、と。

(2000.6.1)

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