南関東地区の競走体系

 南関東地区に限らず、競馬は重賞競走を中心に競走体系が組まれる。
 南関東地区の場合、重賞(G1、G2、G3)、準重賞(JRAで云えばオープンもしくは1600万下の特別競走にあたる)、特別、特選、選抜、普通(一般)の各競走で組み立てられている。
この他、大井以外の3場では、「JRA認定競走」(これに勝つと、中央競馬の特別指定競走への出走や中央競馬所属の厩舎への移籍が優先的に認められる)の2歳戦や、JRAとの条件交流競走(例・中央1000万下vs南関東B2など)が行われている。

ダート統一重賞について

 ’95年より、地方競馬とJRAとの条件戦を含めた指定交流競走が本格化し、ダート競馬のレース体系が、全国レベルで整備され始め、’97年には、統一グレード制が敷かれている。南関東地区の重賞競走のうち、計17競走が統一重賞で、特に川崎記念、帝王賞、JDD、東京大賞典がGT(基本的にJRAの日本ダービー、天皇賞、有馬記念などと同格のはずなのだが……)に格付けされている。
但し、統一グレードと南関東グレードは、必ずしも一致しておらず、南関東ではG1の関東オークスが統一GVで、G2の東京盃が統一GUと、南関東のG1レースのはずが、全国レベルで見るとG2レースよりも格下に置かれるといった、実にややこしくて奇妙な事態も起きている。

ジュニアチャンピオンロード編

 牡馬は、昨年から格上げされてしまった(?)川崎の全日本2歳優駿GT(G1・川崎1600m)、牝馬は東京2歳優駿牝馬(G1・大井1600m)を頂点にして戦いを繰り広げる。
 だが、例年、牡馬路線については、11月のハイセイコー記念(旧青雲賞)(G2・TCK1590m)で一線級が激突し、12月の全日本――は回避して、そのまま年明け2月の京浜盃(G2・大井1690m)に向かうことが多く、指定交流になって以降は、それが一段と顕著となっている。
 また、今年度は平和賞(G3・FRT1600m)が、東日本交流戦にレギュレーション変更されているが、それでも賞金額と、ハイセイコー記念を目指すことになる(ハイセイコー記念に出走するには、大井で出走経験があることが条件になっている)一線級は、ここを回避することになりそう。

クラシックロード編

 南関東では中央同様に牡・牝それぞれに三冠路線敷かれていた。が、中央や他地区と違い南関東はアメリカンスタイルのクラシック路線を標榜し、4月〜7月の短期間に行われる。
 今年は牡馬路線に改革が行われ、JDDが三冠路線に組みこまれる形になり、なんと東京王冠賞が廃止されてしまった。これにより伝統の南関東三冠路線は、羽田盃(G1・TCK1800m)→東京ダービー(G1・TCK2000m)→ジャパンダートダービーGT(G1・TCK2000m)となり、伝統の東京ダービーが単なるトライアル戦扱いと化した感がある(と思っていたら、事実上トライアル戦だし。。
 牝馬も路線改革が行われ、桜花賞(G1・浦和1600m)から、これまで牝馬三冠最終戦だった東京プリンセス賞(G1・TCK1790m)を経て関東オークスGV(G1・川崎2100m)に向かうローテーションに変更になった。
 ただ、ローテーションが思いの外きつく、管理者の当時の懸念の通り、この世を去る有力馬が続出してしまっているのも事実。
 さらに大多数の地方競馬主催者同様、暦年ではなく、俗にいう会計年度で日程を決定していることで、ファンや関係者にまで、「トライアル→本番」の図式を描くことが難しくなっていることも弱みである。
 また、どう考えても、牡馬よりも牝馬の方が、このクラシックロードがキツいだろう。ただでさえ、繊細な3歳牝馬、しかも桜花賞は昼間であと2つはナイター、桜花賞とオークスは左回りだけど、東プリ賞は右回りだし……。
 それから桜花賞も、東日本交流くらいにしないと、年々注目度が落ちる一方だし……。


ニッポン・チャンピオンロード編

 4歳馬の秋シーズンは、かつては東京王冠賞(当時大井2600mで11月上旬に施行)が中心になっていたのだが、現在では、名目上は9月に盛岡で行われるダービーグランプリGTを目指しての戦いが繰り広げられることになっている。つまり、実際は夏シーズンの戦いと表した方が正しい。というわけで、春に活躍した一線級の馬は、休養に入り、まず盛岡に遠征することは無く、さらに春シーズンのローテーションの影響からか、これ以外にも早々に休養に入る馬も多い。これらの事情から、春のクラシックに間に合わなかった組が新興勢力として台頭することになる。
 基本的には、裏路線の若潮盃(G3・FRT1600m)から、黒潮盃(G2・TCK1690m)もしくは戸塚記念(G3・川崎2000m)を経て、スーパーチャンピオンシップ、ゴールドカップが廃止になった関係で、一挙に間隔が空くが、12月の東京湾カップ(G3・FRT2000m)を目指す。
 牝馬路線はというと、今年リリーカップ、ゴールデンティアラ賞が廃止になり、10月に繰り上がったロジータ記念(G2・川崎2100m)を中心に、来年に向けての戦いを繰り広げることになっている。


 キング・オブ・ダートロード編

 末の東京大賞典GT(G1・TCK2000m)と6月施行の帝王賞GT(G1・TCK2000m)が、最高のタイトルとして君臨している。が、1月末か2月初旬に行われる川崎記念GT(G1・川崎2100m)もその伝統と格式から、前記2レースと同等以上の格付けと扱いがなされている。さらに年度末を飾るダイオライト記念GU(G1・FRT2400m)、秋に入ってJBCクラシックから、11月下旬の彩の国・浦和記念GU(G2・浦和2000m――何故、昨年からわざわざ「彩の国」と付いたのかは謎)が、南関東の古馬の5大タイトルといって良いはずなのだが……ここ数年、JRA勢に押され気味になっている。何とか、馬場貸し重賞と化すのだけは、避けてもらいたいが……。
 また個人的には、帝王賞か大賞典のどちらかを2800mに戻して欲しいのが、正直な感想。


クイーン・オブ・ダートロード編

 7月下旬から2月に施行時期が移動したエンプレス杯GU(G2・川崎2100m)が中心。とにかく牝馬に関しては、この地区に牝馬限定の統一重賞が集中しているため、事実上、牝馬のダート日本一を決める路線と云っても過言ではないだろう。
 4月のマリーンカップGV(G2・FRT1600m)から、7月のスパーキングレディーカップGV(G2・川崎1600m)、10月のクイーン賞GV(G2・FRT1800m)、年が明けてだいたい川崎記念と同時期に行われるTCK女王盃GV(G2・大井2000m)をステップに、今年からエンプレス杯でクライマックスを迎えている。
 交流開始以降は、なんだか中央のダート用牝馬の為のローテーションと化しているような気もしないでもないが……(それでもまあ、この路線は比較的互角な戦いが繰り広げられている)。
 時折、牝馬限定の指定交流重賞が南関東地区に集中していることを批判する向きもあるが、昔からこの地区には牝馬限定重賞が存在していたわけだし、JRAが作らない分(公営他地区に求めるのは酷というもの)を、そのまま交流競走にしているだけの話なのに、それを以て批判するのは、的外れとしか言い様が無い。


スピードスターロード編

 距離適性別の棲み分けが当たり前になってきた現代競馬において、南関東地区でも短距離路線が整備されつつある。年明け開催の東京シティ盃(G3・TCK1390m)から、年度末開催のフロンティアスプリント盃(G3・TCK1190m)、TCKの年度初開催=初トゥインクルのマイルGPまでが、一つのヤマ。少し間を置いてサンタアニタトロフィー(G3・TCK1590m)、アフター5スター賞(G3・TCK1790m)から秋の短距離路線に入る。そして、なんといっても10月上旬の東京盃GU(G2・大井1190m)がクライマックス、そこからJBCスプリントへ挑むケースも多い。これのトライアル的存在として9月頭のさきたま杯GV(G2・浦和1400m)があるが、こちらは完全に東京盃かマイルCS南部杯GT(盛岡1600m)に向かう中央馬の為のレースと化している


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